循環器科は心臓病、高血圧、血管疾患を主に診療している科です。
心臓病はさらに、狭心症、心筋梗塞など虚血性心疾患、心臓弁膜症、不整脈、心筋症、不全などに分かれます。このうち最近増加し、当院でも力を入れて診療している虚血性心疾患と肺動脈血栓塞栓症について説明します。
(1)虚血性心疾患とは?
虚血性心疾患は心臓の筋肉に、酸素や栄養を送る血管(冠状動脈といいます)の動脈硬化によっておこる病気で、近年食事を含む生活習慣の変化により、急速に増加してきた病気です。
動脈硬化の程度が軽いうちは、症状もありませんが、徐々に冠状動脈が狭くなると、運動した時に心臓の筋肉の酸素不足から、胸の痛みを覚える様になります(これを狭心症といいます。)
また、深夜から早朝にかけて安静にしているときに、胸が痛くなるタイプの狭心症(冠れん縮といいます)の方もあります。さらに冠状動脈が血栓(血液の塊)で閉塞してしまいますと、完全な酸素欠乏となり、放置すれば心臓の筋肉が死んでしまいます(これを心筋梗塞といいます。)
そこで、自覚症状からこれらの虚血性心疾患が疑わしい場合、さらに心電図検査や放射性同位元素を使った心筋シンチグラムをおこない、最終的に冠状動脈を直接レントゲン写真にとる冠動脈造影検査で診断を確定します。
狭心症では治療としてはまず薬物療法を行いますが、症状が改善しない場合や、動脈硬化の程度が強い場合、冠状動脈の狭いところをバル-ンで拡張する治療も行います(冠動脈形成術といいます。簡単に風船治療などとも表現します。)
また、拡張したところがもう一度狭くなるのを予防する目的で、筒状の金網(ステントといいます)を入れることもあります。
昨年の8月から表面に狭窄予防の薬剤をぬったステントが保険適応になり当院でも使用していますが、これにより再度治療を要する方が少なくなってきています。急性心筋梗塞では、閉塞した血管を一刻も早く再開通させる必要がありますので、できるだけ早く冠動脈造影を行い、やはり冠動脈形成術を行います。
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| 冠動脈形成術前 | 拡張中 | 拡張後 |
当院の実績ですが冠動脈造影を1979年より開始し、平成16年末までで通算9873例となりました。
また冠動脈形成術は1984年より開始し通算1712例となっています。
昨年1年間で190例(うちステント160例)に行い、初期成功率は98%でした。
急性心筋梗塞は年間70-100例ですが昨年1年間の急性心筋梗塞は70例で、65例(93%)に冠動脈脈形成術を行い、初期成功率は98%でした。


(2)肺動脈血栓塞栓症とは
最近の報道でよくご存じかも知れませんが、エコノミ-クラス症候群などとも呼ばれています。
長時間同じ姿勢(特に寝たままの状態)をとり、足の運動が少なくなるとと、静脈の血液の流れが悪くなり血栓(血液の塊)ができやすくなります。
もともと、血液がかたまりやすくなる体質の人や、水分の不足などの悪条件が重なると、いっそうおこりやすくなります。
足の静脈にできた血栓が何かの原因で血管からはがれ、血液の流れにのって肺の動脈につまってしまった状態を肺血栓塞栓症といいます。当院でも年間10例前後の症例を経験しています。
心筋梗塞同様急に起こり、初発症状は呼吸困難や胸の痛みが圧倒的に多く、約半数は重症型でショック状態になり、人工的な肺、心臓の補助装置(人工呼吸器や経皮的心肺補助といいます)が必要となることもあります。旅行や病気で長い時間同じ姿勢をしている人は適度に足を動かすことや、下肢の静脈の血流を改善するストッキングを用いて予防します。
また、起こりやすい条件が重なっている場合、血栓ができるのを防ぐ薬を、注射や点滴で使用します。予防対策を行っても血栓が出来てしまった場合、最近ではカテ-テルにより血栓を破砕吸引する治療や、はがれた血栓が肺動脈に流れていかないように、血管の中に樹脂や金属で出来た傘の様な器具(下大静脈フィルタ-といいます)を一時的にいれて、肺血栓塞栓の予防を行います。
これらの治療を行っても、重症型の死亡率は高いため、やはり予防が最も重要と考えられます。そのためいろいろな学会が協力し、予防マニュアルが発表されました。
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| 肺動脈血栓症 (肺動脈内に線状の血栓が見られます) |
下大静脈フィルタ- |
(3)心肺蘇生の講習会
心筋梗塞や肺血栓塞栓症に限らず、循環器の病気は急に発病し、命に直接かかわる場合が多い領域です。
また、急に倒れた人が救急車を待つ間に、一般市民による救命処置が行われれば、救命できることが多いことがわかっています。
そこで当院では一昨年より研修センタ-での行事の一環として、一般市民の方に救命処置の講習会を行うと共に、昨年より岩国市内の中学校におじゃまして、卒業年度の学生に心肺蘇生の講習を開始しました。
これにより、当院の診療圏での心臓病の救命率が向上することを目指しています。
